日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
肝硬変に伴うこむら返りに対する八味地黄丸の有用性に関する検討
高森 成之安藤 貴志
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 45 巻 1 号 p. 151-157

詳細
抄録

肝硬変では150例中48%と高頻度に有痛性の限局性筋痙攣であるこむら返りを認めた。しかも, 肝硬変の非代償期でこむら返りの合併頻度が76.7%と, 代償期36.4%に比べ高かった。こむら返りの治療として, 八味地黄丸1日5gまたは7.5gをこむら返りを伴う肝硬変31例 (代償期15例, 非代償期16例) に4週間投与し, 全例にこむら返りの改善 (うち消失61.3%) を認めた。その上, 下肢の振動覚検査を施行の5例で, 八味地黄丸投与後全例こむら返りの改善と同時に振動覚閾値の改善を認めた。また八味地黄丸はこむら返りを伴う肝硬変11例での比較試験で, 五苓散 (改善率36.4%) や芍薬甘草湯 (改善率54.5%) に比べ有意に改善率が高かった。メコバラミン投与無効のこむら返りを認める6例に, 八味地黄丸投与後全例こむら返りの改善を認めた。以上より, 八味地黄丸は肝硬変のこむら返りの治療として, 病態に関係なく投与でき, 極めて有用であった。

著者関連情報
© 社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top