1997 年 48 巻 3 号 p. 335-340
3人の初期糖尿病患者の治療に当たって, 中医学的診察を行った所, 舌苔が白膩,脈が滑あるいは渋で, 痰飲, 血〓が原因あるいは増悪因子となっていることが示唆された。痰飲の原因は生来の脾虚あるいは肝気鬱結によっておこった脾虚湿勢の結果生じたと考えられる。中医弁証に従って, 漢方薬を投与した結果, すべての症例で血糖値の改善が認められた。この結果から, 糖尿病は消渇であるという漢方医学の常識は, 初期の軽症NIDDMには当てはまらないと考えた。したがって, 口渇, 多尿などの認められない糖尿病には補陰を主とした消渇としての治療は十分な効果を期待しにくいと推論した。