ミネラル成分やpH値の異なる4種のミネラルウォーターと水道水を用いて, 小柴胡湯及び小柴胡湯加竜骨牡蠣を煎じた際に得られる抽出エキス量やサイコサポニン含量を測定し, 比較検討した。高い硬度を持つミネラルウォーターで小柴胡湯及び小柴胡湯加竜骨牡蠣を煎じた時, 他のミネラルウォーターや水道水に比べ, 抽出エキス量は最も多くサイコサポニンb2含量は最も低いことが認められた。一方, 小柴胡湯加竜骨牡蠣は小柴胡湯単独に比べ総サイコサポニン含量が著しく低下していた。以上より, ミネラルウォーターによる漢方薬の煎出は煎出液中の内容に変化を及ぼし, 治療効果に影響を与える可能性が考えられる。また, 臨床上患者には漢方薬の煎出時に用いる水として極端に硬度の高いミネラルウォーターの使用は, 通常飲料水として用いる水での場合と大きく異なる可能性があり, 注意する必要があると考える。