日本東洋医学雑誌
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大陥胸丸の使用経験
長坂 和彦引網 宏彰名取 通夫土佐 寛順寺澤 捷年
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2002 年 53 巻 5 号 p. 509-514

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抄録

今回我々は, 強度の「心下痞鞭」,「項背強」と便秘を認めた二症例に, 大陥胸丸を長期間連用する機会を得た。症例1は75歳・男性。1986年から, 軽い労作でも息が切れるようになり, 肺気腫・塵肺と診断された。労作時の呼吸困難が著しく, テオフィリン除放製剤, 気管支拡張剤, 去痰剤, ステロイドの服用でも症状が改善しないため受診した。大陥胸丸を服用後は, 項背の強ばりや安静時の呼吸困難は改善し, ステロイドも中止することができた。大陥胸丸は項背の強ばりと心下痞鞭を治すことが有名であるが, 本例では咽喉部の不快感も消失した。症例2は, 56歳・女性。1980年頃から肩こりが強くなり, 90年から頭痛を伴うようになり受診した。大陥胸丸を投与したところ, 頭痛と項背の強ばりが改善し, 厚い黄苔も消失した。水の停滞のために心下痞鞭を来す場合は, 自覚症状の改善とともに心下痞鞭が軽決することが多い。しかし, 今回の2症例では, 心下痞鞭は改善しなかった。

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