2005 年 56 巻 1 号 p. 97-101
パニック障害で睡眠障害を伴い漢方工キス製剤の投与を希望する4症例に対してパニック発作の胸部症状を梔子の薬能にある心中懊悩ととらえて梔子柏皮湯工キスを投与した。本剤の投与によって速やかに動悸・胸部不快, 顔面紅潮などの発作時の症状, 非発作時の不安感, 不眠などの諸症状の改善が得られた。4症例に共通していた事柄は閉経期以後の女性であること, 更年期障害のような顔面紅潮やのぼせ感, 掻痒感やしびれ感などの異常感覚を伴い, 広場恐怖を伴わないことであった。これまで梔子柏皮湯は肝障害や皮膚疾患に対して用いられることが多かったがパニック障害などの精神神経疾患においても鑑別すべき処方であると考えられた。