日本東洋医学雑誌
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東西の医学結合を考える
中野 哲
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2005 年 56 巻 5 号 p. 769-778

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抄録

現在の日本の近代医学は基礎医学や医療機器の進歩によって著しく発展し, 今や臓器移植, 遺伝子診断や遺伝子治療まで可能になってきた。この近代医学 (西洋医学) は臓器医学を基盤としており, 客観性のある科学的アプローチに慣れており, 急性期疾患や外科的疾患の分野の診療を得意とする。一方, 漢方医学は患者の話をよく聞いて独特の病態把握法で, 診断法でもある証によって病気を全体として捉えるので, 多くの臓器に障害がみら加れる高齢者や慢性に経過する機能性疾患などの治療には有用である。近年, 臨床の場でのEBMが求められてきている。昨今, EBMに耐えうる漢方薬が東洋医学会で報告され, さらに証に対する科学的分析も行われるようになり漢方医学も客観性, 普遍性を目指すようになってきた。西洋医学と漢方医学はそれぞれの得意分野と不得手の分野があり両者は相補完的な関係にあると思われる。
ここにおいてより良い医学を目指して analytic medicine である西洋医学と holistic medicine である漢方医学の結合が望まれる。

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