2012 年 38 巻 3 号 p. 2-15
本稿では,第二次世界大戦以前の日本の粉塵対策技術の動向を分析し,同時期におけるアスベスト粉塵規制の技術的可能性を検討した。粉塵対策は一般に「湿潤,除塵・集塵,隔離,清掃,保護具」から構成される。内務省社会局は1930年代にはこうした方法を粉塵対策の方法と定義し,その技術要件や構成を詳述していた。また工場監督年報や工場衛生に関する各種専門書によると,1930年前後には,各業種では粉塵対策を目的に粉塵対策技術を利用していた。以上のことから,第二次世界大戦以前の日本では,アスベスト粉塵対策へ同技術を導入することは可能であったということである。