感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
原著
新規技術により作成した二酸化チタン(TiO2)不織布の光触媒反応による ウイルス不活性化効果についての検討
高木 弘隆杉山 和良
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 85 巻 3 号 p. 244-249

詳細
抄録

我々は新規技術による二酸化チタン (TiO2) 不織布を用い,この光触媒効果によるネコカリシウイルス F9 株(FCV-F9 株),ヒトアデノウイルス GB 株(HAdv3-GB 株),インフルエンザ(Influenza A 及び B,以下 Inf-A 及び Inf-B)ウイルスの不活性化効果および吸着効果を検討した. 各ウイルス液 10μL を 1cm2のTiO2 不織布に滴下・乾燥後に最大波長 356nm の紫外線を照射したところ,FCV-F9 株及び HAdv3-GB 株は 30 分間で 3.5 log10TCID50 以上の感染価減少が認められた.Inf-A ウイルス及び Inf-B ウイルスでは紫外線照射以前より感染価が著しく減少し,TiO2 不織布へ直接吸着することが示唆された. そこで TiO2 不織布への各ウイルスの吸着効果を各ウイルス液の滴下のみで検討した.FCV-F9 株及び HAdv3-GB 株では吸着性は認められなかったが,Inf-A 及び Inf-B ウイルスではコントロールと比較して,5 分後に 2 log10TCID50,30 分後で 3 log10TCID50 の感染価減少が認められ,その吸着性が示唆された.Inf A 及び B ウイルス数株によるTiO<sub>2</sub> 不織布への経時的吸着効果は,早いもので 5 分,概ね 30 分で 3 log10 から 4 log10 TCID50 以上の吸着性が示唆された. 新技術によりTiO2 を高密度・平滑,安定な状態で不織布にコーティングした.これにより3 種のウイルスに対する不活性化効果とインフルエンザウイルスに対する強力な吸着効果が示唆され,今後この素材によるウイルス感染制御の可能性が期待される.

著者関連情報
© 2011 社団法人 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top