感染症学雑誌
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最新号
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原著
  • 蕪木 康郎, 上野 裕之, 嘉悦 明彦, 泊 賢太郎, 菊地 孝司, 小堀 すみえ, 宮崎 元伸
    原稿種別: 原著
    2020 年 94 巻 1 号 p. 86-96
    発行日: 2020/01/20
    公開日: 2020/08/09
    ジャーナル フリー

    ヒトパラインフルエンザウイルス(Human Parainfluenza Virus:HPIV)は4 つの型に分類されており,遺伝子検査には,文献で報告された型別可能なMultiplex-RT-Nested-PCR 法(既報方法)が広く用いられている.しかしながら既報方法で得られる増幅産物の塩基配列は短く,特に3 型は解析に供する塩基配列が 60 塩基であることから系統樹解析の実施が困難だった.そこで,HPIV を高感度に検出でき,加えて系統樹解析が可能な塩基配列長が得られるMultiplex-RT-Nested-PCR 法(本法)の開発を試み,HPIV のHN 領域を標的としたプライマーを新たに設計した.その結果,本法のNested-PCR により,HPIV1 型,2 型,3 型, 4 型各々で652bp,950bp,843bp,552bp の増幅産物が得られた.既報方法を用いて既にHPIV 遺伝子が検出されている193 検体に対して本法を実施したところ,全ての検体からHPIV 遺伝子が検出された.また,他の呼吸器症状を引き起こすウイルス12 種に対して本法を実施したところ,交差反応は認められなかった.
    さらに,本法によって得られた増幅産物に対してダイレクトシーケンスを実施し,決定された塩基配列を用いて系統樹解析を行った.解析領域は,Nested-PCR 用プライマー部分まで除いた,HPIV1 型608nt,2 型907nt,3 型799nt,4 型510nt とした.系統樹解析の結果,HPIV1 型,2 型,3 型の検体は既知のクラスターに分類をすることができ,HPIV4 型の検体はサブタイプを分類することができた.
    以上の結果から,本法は,HPIV を検出,そして解析する遺伝子検査の一つとして,有用であることがわかった.

  • 米澤 仁, 田中 信悟, 八鍬 佑貴, 髙橋 聡
    原稿種別: 原著
    2020 年 94 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2020/01/20
    公開日: 2020/08/09
    ジャーナル フリー

    近年,高感度HBs 抗原測定試薬が開発され,その有用性が報告されている.しかし,その高感度化の弊害として特異性の低下(偽陽性)が危惧されている.偽陽性を避けるため,低値陽性例にはHBs 抗体を用いた抑制試験でその真偽を確認することが推奨されているが,実施している施設は多くない.従って,高感度HBs 抗原測定試薬を導入しているが抑制試験を実施していない施設では,HBs 抗原偽陽性例が増加している可能性がある.2018 年4 月,特異性の向上を目的として高感度HBs 抗原測定試薬「ルミパルスプレストHBsAg-HQ」の改良が行われた.今回,本試薬の性能について検討を行ったので報告する.
    対象は改良前「ルミパルスプレストHBsAg-HQ」にて偽陽性と判定された7 検体とした.本検討における偽陽性の基準は「HBs 抗原定量値がカットオフ(0.005IU/mL)以上かつ抑制試験にて陰性」とした.測定には全自動化学発光酵素免疫測定システム「ルミパルスL 2400」を使用した.
    改良後試薬を用いてHBs 抗原値を測定した結果,改良前試薬で偽陽性とされた7 検体中5 検体でHBs 抗原はカットオフ値(0.005IU/mL)未満であった.検出限界は0.0015IU/mL であり,改良前と比較して同等であった.偽陽性の原因として非特異反応の可能性について検討したところ,標識アルカリフォスファターゼに対する非特異反応と考えられる検体を認めた.改良前試薬での測定期間における月別偽陽性発生率は平均0.26% であったが,改良後試薬へ移行後は平均0.09% と低下傾向を認めた.
    以上から,改良後「ルミパルプレストスHBsAg-HQ」を用いることで偽陽性率の低下が期待でき,抑制試験数および偽陽性の「誤報告」を減少できる可能性がある.

  • 増田 剛太, 今村 顕史, 関谷 紀貴, 前田 卓哉, 橘 裕司, 小林 正規
    原稿種別: 原著
    2020 年 94 巻 1 号 p. 102-108
    発行日: 2020/01/20
    公開日: 2020/08/09
    ジャーナル フリー

    1992~2000 年の期間に都立駒込病院感染症科で診療した赤痢アメーバ感染症{腸炎54 例,肝膿瘍58 例,無症候性原虫保有者(キャリア)17 例}の血清赤痢アメーバ抗体価(間接赤血球凝集反応)を後方視的に検討した.これら症例間での平均検査回数は大腸炎2.1 回,肝膿瘍3.3 回,キャリア1.3 回であった.各症例での検査病日・回数は不定期・任意であるため,抗体検査が複数回なされた症例では各症例での最高値を当該症例の抗体価とした.検査試薬としては赤痢アメーバHA(KW)(日本凍結乾燥研究所製造;協和薬品工業株式会社販売)を用い,希釈濃度1:80 以上で凝集を示す場合を陽性とした.アメーバ性腸炎での陽性率は85.2%(抗体価の範囲1:80~1:5,120),アメーバ性肝膿瘍では98.3%(範囲1:160~1:20,480),キャリアでの陽性率は11.7%であった.
    非アメーバ性腸炎28 例を陰性対照とすると全例が抗体陰性であり,その結果,赤痢アメーバ性腸炎での赤痢アメーバ抗体の特異度は100%,また,肝臓の空間占拠性疾患16 例(非アメーバ性肝膿瘍8 例,肝腫瘍8 例)を陰性対照とすると全症例で血清抗体陰性であり,アメーバ性肝膿瘍に対する血清赤痢アメーバ抗体の特異度も100%だった.

  • 阿部 雅広, 荒岡 秀樹, 木村 宗芳, 谷口 修一, 米山 彰子
    原稿種別: 原著
    2020 年 94 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 2020/01/20
    公開日: 2020/08/09
    ジャーナル フリー

    発熱性好中球減少症は早期の適切な抗菌薬治療が必須な病態であり,原因微生物の特定のためには,抗菌薬開始前の血液培養2 セット採取が推奨されている.好中球減少が長期間持続する白血病や造血幹細胞移植患者においては,好中球減少期にフルオロキノロン系抗菌薬(以下FQ)を予防内服することにより血流感染症の頻度が減少することが示されている.しかしながら,FQ 予防内服下の血液培養採取の意義に関する報告は寡少である.本研究の目的は,FQ 予防内服中の同種造血幹細胞移植患者における,初回の発熱性好中球減少症発症時の血液培養2 セット採取の意義を明らかにすることである.
    国家公務員共済組合連合会虎の門病院本院において,2007 年1 月~2012 年2 月の期間に同種造血幹細胞移植を施行された患者のうち,FQ を予防内服したものを対象とし,I 期(2007 年1 月~2009 年12 月,トスフロキサシン450mg/日),II 期(2010 年1 月~2012 年2 月,レボフロキサシン500mg/日)に分け,FQ 予防内服下に発熱性好中球減少症を生じ,血液培養を採取された症例を,後方視的に解析した.
    対象期間中,経験的な抗菌薬変更前に血液培養を採取された症例はI 期109 例,II 期147 例であった.II 期では,血液培養2 セット採取を推進した結果,2 セット採取率はI 期4 例(3.7%)に対し,II 期は75 例(51.0%)と著増を認めた(p <.0001).また,血液培養陽性例のうち,真の血流感染症と判断された症例はI 期29 例(26.6%)に対し,II 期59 例(40.1%)であり,両群間に有意差を認めた(p = .03).II 期では血流感染症検出率の上昇に加え,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や皮膚常在菌であるグラム陽性桿菌を真の血流感染症と判断できる割合が増加した.本研究結果より,FQ 予防内服下であっても,血液培養2 セット採取の臨床的意義は高く,血流感染症診断率の向上に加え,真の血流感染症と判断にも有用であり,適切な抗菌薬選択につながる可能性が示唆された.

症例
  • 牧野 英記, 宮植 真紀, 兼定 晴香, 田口 禎浩, 甲田 拓之, 梶原 浩太郎
    原稿種別: 症例
    2020 年 94 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 2020/01/20
    公開日: 2020/08/09
    ジャーナル フリー

    A 62-year-old immunocompetent male presented with a 20-day history of fever and a 2-day history of right facial swelling and trismus. The patient was diagnosed as having a buccal abscess suspected of odontogenic infection (OI) and treated with ceftriaxone and clindamycin. However, the patientʼs condition rapidly deteriorated with septic shock, acute respiratory distress syndrome, and disseminated intravascular coagulation due to severe OI. Antibiotics were switched to meropenem, and large amounts of fluids, noradrenaline,and hydrocortisone were intravenously administered. Although Eikenella corrodens and Slackia exigura were detected in both blood and abscess cultures, the patient was not diagnosed as having infective endocarditis. Facial swelling became worse again on day 10 and the wound was drained. The patient was discharged on day 41. Poor oral-hygiene and delay in patient consultation may be risk factors for severe OI. Clinical decision making would benefit by knowing that OI can cause severe, complicated infection in immunocompetent patients and that early recognition of severe disease signs such as trismus can lead to favorable outcomes.

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