抄録
多剤耐性結核とHIV 感染者での難治性結核の増加が結核治療をますます困難なものにしており,治療期間の短縮と多剤耐性結核への対応に欠かせない新規抗結核薬,特に持続生残型や休眠型の結核菌に有効な薬剤の開発が強く求められている.本稿では,現在までの新規抗結核薬の開発状況を踏まえつつ,新しいタイプの抗結核薬の開発のためのdrug target の探索をどのように進めていくのかと言う観点に立ち,結核菌感染宿主における感染防御に重要なサイトカイン・ネットワークの形成に関わる細胞内シグナル伝達系に介入して,それを攪乱する結核菌の種々の病原因子に照準を合わせ,それら病原因子の分子生物学的な機能について,新しいタイプのdrug target の探索研究との関連から考察する.