感染症学雑誌
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原著
Haemophilus influenzae type b 髄膜炎における tazobactam/piperacillin の髄液中濃度に関する検討
深沢 千絵星野 直朽名 悟澤田 恭子佐藤 洋子石和田 稔彦
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2013 年 87 巻 5 号 p. 590-595

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抄録

Haemophilus influenzae type b(Hib)ワクチンの普及により Hib 髄膜炎は減少が期待されるが,一方で耐性化は進行しており,β ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性株(BLNAR)を含む耐性菌を考慮した初期抗菌薬の選択が必要となっている.tazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)は,BLNAR における最小発育阻止濃度が良好で β ラクタマーゼ阻害剤を含む薬剤である.髄膜炎に対する保険適用はないが,動物実験では髄液移行は良好とされており,当院では 2008 年以降 Hib 髄膜炎において耐性菌対策として,ceftriaxone と TAZ/PIPC の併用による初期治療を行ってきた.そこで,細菌性髄膜炎における TAZ/PIPC の治療選択薬としての可能性を検討する目的で,TAZ/PIPC の髄液中濃度の検討を行った.当院にて Hib 髄膜炎に対しTAZ/PIPC 1:8 製剤を投与した症例において,TAZ/PIPC 投与開始後の髄液の残検体を用い,髄液中の TAZ と PIPC の濃度を測定した.対象は 5 症例 6 検体で患者は月齢 6 カ月~59 カ月であった.TAZ/PIPC 投与量は95.7~113.6mg/kg/回×3 回/日で,投与終了後 0 分~105 分の髄液中濃度は,TAZ が 0.319~1.32μg/mL,PIPC が 2.54~7.74μg/mL であった.承認されている投与量にて,急性期のピーク濃度は β―ラクタマーゼ阻害および Hib に対する抗菌作用に十分な髄液中濃度を示していた.H. influenzae 髄膜炎の初期治療薬として,第 3 世代セフェム系薬や meropenem に加え,TAZ/PIPC を併用することは耐性菌対策として有用であると考えられる.

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© 2013 社団法人 日本感染症学会
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