感染症学雑誌
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原著
食肉およびヒトの便から分離したCampylobacter jejuni/coli の 薬剤感受性試験並びに耐性遺伝子変異の検討
大石 明村上 光一江藤 良樹世良 暢之堀川 和美
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2015 年 89 巻 2 号 p. 244-253

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抄録

Campylobacter jejuni/coli の福岡県における薬剤耐性状況を把握するため,2011 年から2013 年の間に分離した食肉由来株55 株およびヒト由来株64 株の計119 株(C. jejuni 98 株,C. coli 21 株)を用いて,寒天平板希釈法により薬剤感受性試験を行った.また,キノロン系抗菌剤耐性株およびテトラサイクリン系抗菌剤耐性株の耐性遺伝子の変異等を検討した. 実施した11 薬剤(セファレキシン,セフォキシチン,ナリジクス酸(NA),シプロフロキサシン(CPFX),レボフロキサシン(LVFX),テトラサイクリ,ミノサイクリン,アンピシリン,ストレプトマイシン,カナマイシンおよびエリスロマイシン)に対して,C. jejuni/coli の株はいずれかの薬剤に耐性を示し,キノロン系3 抗菌剤への耐性率は,NA 43.7%,CPFX 41.2%およびLVFX 40.3%であった.また全ての株が多剤耐性株であった.食肉由来株とヒト由来株では,キノロン系3 抗菌剤への耐性率では,食肉由来株(32.7%~34.5%)よりヒト由来株(46.9%~51.6%)の方がやや高い傾向を示した.耐性遺伝子の確認では,キノロン系抗菌剤3 剤のいずれかに耐性を示した50 株のうち44 株(88.0%)のキノロン耐性決定領域の遺伝子変異(ACA→ATA 又はACT→ATT),それに伴うアミノ酸置換(Thr-86→Ile)が認められた.また,C. jejuni 4 株にてThr-86→Ile を含まず,かつ,Ser-22→Gly を含むアミノ酸置換のあらたな組み合わせ(Ser22GlyAsn203Ser-Ala206Val およびSer22Gly-Asn203)が確認された.さらに,これら4 菌株のcmeABC の遺伝子の変異を確認した.今回の結果,福岡県内のカンピロバクターのキノロン系抗菌剤に対する耐性率は,依然高率であることが判明し,gyrA においてC257T 変異を含まないアミノ酸置換の組み合わせが確認されるなど耐性機序も多様化しており,看過できない状況であることが分かった.

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© 2015 一般社団法人 日本感染症学会
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