感染症学雑誌
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原著
Bacillus spp.陽性血液培養検体とリネン管理
糸賀 正道井上 文緒齋藤 紀先萱場 広之
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2016 年 90 巻 4 号 p. 480-485

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抄録

Bacillus cereus は芽胞形成性のグラム陽性桿菌であり,広く自然界に分布する環境微生物である.食中毒事例を除けばヒトの病原菌となることは稀であるが,新生児や易感染性患者に日和見感染して重篤な敗血症を起こす菌である.感染経路として不適切な血管内留置カテーテル操作とリネン類を含む環境汚染と言われている.昨今,リネン管理による偽アウトブレイクが散見され問題となっている.当院A 病棟においてBacillus spp.陽性血液培養検体数が著明に増加したため,感染制御部が原因究明・対策を行った.方法としてA 病棟・病院全体において環境調査を行った.そして原因に対して速やかに対応を行った.また,北東北地方の基幹病院5 病院に対してBacillus cereus 検出状況について調査を行った.環境調査により未使用清拭タオルよりBacillus cereus が検出された.汚染段階に関する調査にて,リネン洗濯委託業者での洗濯では殺菌されておらず,当院搬入時にすでに汚染されていた.ディスポタオル導入した結果,同菌陽性血液培養検体数は有意差をもって減少した.北東北地方の基幹病院における調査の結果,検出件数の高い病院では清拭タオルの洗濯を業者に依頼していた.当院におけるBacillus spp.陽性血液培養検体は,清拭タオル汚染を原因としたものであった.清拭タオルをはじめとしたリネン管理が,感染症検査と診療における精度管理および感染制御において重要であると考えられる.

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© 2016 一般社団法人 日本感染症学会
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