感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
原著
HIV感染者に対する梅毒検査および梅毒感染の現状
塩塚 美歌山元 泰之四本 美保子村松 崇一木 昭人近澤 悠志備後 真登清田 育男大瀧 学尾形 享一萩原 剛鈴木 隆史天野 景裕福武 勝幸
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 90 巻 6 号 p. 798-802

詳細
抄録

序文:近年,HIV感染者の梅毒感染は世界的に問題になっている.梅毒は臨床症状からの診断はしばしば困難であり,HIV感染症に合併すると臨床症状や検査結果が非典型的になるため,診断や治療効果の判定には注意が必要である.また,梅毒は濃厚な性的接触がなくても感染し,再感染を繰り返す例も多い.米国のガイドラインでは,HIV感染者は症状の有無に関わらず最低年1回の定期的な検査が推奨されているが,本邦の臨床現場での検査と感染例の実態は明らかではない. 対象と方法:2011年6月から2012年6月までの期間に東京医科大学病院臨床検査医学科外来への受診歴があり継続的に経過観察を行っているHIV感染者を対象として,MSM症例で同期間中にtreponema palli dum latex agglutination(TPLA)法およびrapid plasma reagin(RPR)法検査を1回以上行った症例について解析した. 成績:対象者1,000症例のうちMSMは935例であった.そのうちTPLAおよびRPR法検査が1回以上行われたのは723症例であった.TPLA陽性は443例(61.3%),RPR陽性238例(32.9%)であった.RPR陽性例のうち93例95件が対象期間中の梅毒感染,19件は新規診断例と考えられた.93例の年齢中央値は37歳,CD4陽性細胞数中央値は465/μL であった.抗HIV療法施行例が76件,HIV-1 RNA量40copies/mL 未満は61件であった.顕性梅毒は44% で,最も多く認められた症状は2期症状の皮疹であった.約半数は定期スクリーニング検査を契機に梅毒が診断された.3分の2では梅毒の既往歴があった. 考察:HIV感染患者に梅毒感染者が多数認められた.本邦のHIV感染者には梅毒感染の注意喚起が必要であり症状の有無にかかわらず定期的な検査を行うことが早期の治療介入のために重要である.

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top