感染症学雑誌
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原著
間接赤血球凝集反応を用いた赤痢アメーバ感染症の血清診断
増田 剛太今村 顕史関谷 紀貴前田 卓哉橘 裕司小林 正規
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2020 年 94 巻 1 号 p. 102-108

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抄録

1992~2000 年の期間に都立駒込病院感染症科で診療した赤痢アメーバ感染症{腸炎54 例,肝膿瘍58 例,無症候性原虫保有者(キャリア)17 例}の血清赤痢アメーバ抗体価(間接赤血球凝集反応)を後方視的に検討した.これら症例間での平均検査回数は大腸炎2.1 回,肝膿瘍3.3 回,キャリア1.3 回であった.各症例での検査病日・回数は不定期・任意であるため,抗体検査が複数回なされた症例では各症例での最高値を当該症例の抗体価とした.検査試薬としては赤痢アメーバHA(KW)(日本凍結乾燥研究所製造;協和薬品工業株式会社販売)を用い,希釈濃度1:80 以上で凝集を示す場合を陽性とした.アメーバ性腸炎での陽性率は85.2%(抗体価の範囲1:80~1:5,120),アメーバ性肝膿瘍では98.3%(範囲1:160~1:20,480),キャリアでの陽性率は11.7%であった.
非アメーバ性腸炎28 例を陰性対照とすると全例が抗体陰性であり,その結果,赤痢アメーバ性腸炎での赤痢アメーバ抗体の特異度は100%,また,肝臓の空間占拠性疾患16 例(非アメーバ性肝膿瘍8 例,肝腫瘍8 例)を陰性対照とすると全症例で血清抗体陰性であり,アメーバ性肝膿瘍に対する血清赤痢アメーバ抗体の特異度も100%だった.

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© 2020 一般社団法人 日本感染症学会
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