感染症学雑誌
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原著
臨床検体からパラインフルエンザウイルス1,2,3,4 型を検出・遺伝子解析するための新たなMultiplex-RT-Nested PCR 法の検討
蕪木 康郎上野 裕之嘉悦 明彦泊 賢太郎菊地 孝司小堀 すみえ宮崎 元伸
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2020 年 94 巻 1 号 p. 86-96

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抄録

ヒトパラインフルエンザウイルス(Human Parainfluenza Virus:HPIV)は4 つの型に分類されており,遺伝子検査には,文献で報告された型別可能なMultiplex-RT-Nested-PCR 法(既報方法)が広く用いられている.しかしながら既報方法で得られる増幅産物の塩基配列は短く,特に3 型は解析に供する塩基配列が 60 塩基であることから系統樹解析の実施が困難だった.そこで,HPIV を高感度に検出でき,加えて系統樹解析が可能な塩基配列長が得られるMultiplex-RT-Nested-PCR 法(本法)の開発を試み,HPIV のHN 領域を標的としたプライマーを新たに設計した.その結果,本法のNested-PCR により,HPIV1 型,2 型,3 型, 4 型各々で652bp,950bp,843bp,552bp の増幅産物が得られた.既報方法を用いて既にHPIV 遺伝子が検出されている193 検体に対して本法を実施したところ,全ての検体からHPIV 遺伝子が検出された.また,他の呼吸器症状を引き起こすウイルス12 種に対して本法を実施したところ,交差反応は認められなかった.
さらに,本法によって得られた増幅産物に対してダイレクトシーケンスを実施し,決定された塩基配列を用いて系統樹解析を行った.解析領域は,Nested-PCR 用プライマー部分まで除いた,HPIV1 型608nt,2 型907nt,3 型799nt,4 型510nt とした.系統樹解析の結果,HPIV1 型,2 型,3 型の検体は既知のクラスターに分類をすることができ,HPIV4 型の検体はサブタイプを分類することができた.
以上の結果から,本法は,HPIV を検出,そして解析する遺伝子検査の一つとして,有用であることがわかった.

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© 2020 一般社団法人 日本感染症学会
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