感染症学雑誌
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新生児侵襲性B 群連鎖球菌感染症防止を目的とした妊産婦スクリーニング検査および予防方法に関するアンケート調査
羽田 敦子辻本 考平中塚 由香利宇野 将一小林 賢治丸毛 聡加藤 健太郎秦 大資
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2020 年 94 巻 5 号 p. 654-661

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抄録

【背景】日本では新生児侵襲性B 群連鎖球菌(Group B Streptococcus 以下GBS)感染症防止のため,2008 年に予防プログラムが開始され,日本の2011~2015 年調査での罹患率は早発型0.09,遅発型0.12/1000 出生であった.産婦人科診療ガイドライン―産科編2017 改訂版(GL2017)では,妊娠35~37 週に膣と肛門内からの培養検査を行い,GBS 保菌妊婦には分娩時に抗菌薬の静脈投与,培養にはGBS 選択分離培地を推奨している.GL2017 策定後の実態調査はなされていない.
【目的】各産科施設のGBS スクリーニング検査方法の実態を調べるため,アンケート調査を行う.
【方法】米国Vanderbilt 大学開発データ集積管理システムREDCap により情報を集積する.各施設での検体採取時期,部位,培養法,予防的抗菌薬投与法など11 項目について分娩を取り扱う産科施設からの回答をREDCap に入力し,解析した.
【結果】430 施設中237 施設より回答を得た(55.1%).うち50 施設はGL2017 で推奨されている35 週以降に培養を実施しておらず,141 施設は同推奨の膣と肛門内の2 か所から採取されていなかった.分娩時に予防的抗菌薬を静脈内投与していたのは214 施設(90.3%)であった.培養方法は直接法127 施設,増菌法 64 施設であった.GL2017 推奨の,妊娠35~37 週に膣,肛門内2 か所からの培養検査を行い,保菌妊婦の分娩時に予防的抗菌薬静脈投与していた施設は,77 施設(32.5%)であった.このうち,GBS 検出率が最も高く,米国で推奨されているGBS 選択増菌培地を採用している施設は15 施設(6.3%)であった.
【結論】早発型GBS 感染症の発症を最小限にするため,適切な妊婦GBS 保菌スクリーニング法のガイドライン遵守とGBS 選択増菌培地の採用による検出率向上が望まれる.

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© 2020 一般社団法人 日本感染症学会
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