感染症学雑誌
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原著
三重県中南部の活動性肺結核患者における levofloxacin(LVFX)耐性の検討
東 謙太郎坂部 茂俊田中 宏幸中西 雄紀豊嶋 弘一
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2020 年 94 巻 6 号 p. 828-833

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抄録

【背景】Levofloxacin(LVFX)は,本邦では1993年に上市され2016年に抗結核薬として追加承認された.抗結核薬としての位置づけは薬剤耐性や副作用の問題がある患者に対するセカンドライン治療薬であるが,長く尿路感染症や呼吸器感染症に頻用されてきた歴史があり,大腸菌,肺炎球菌などで薬剤耐性が問題となっている.結核菌にも薬剤耐性が危惧されるが,国内で同薬剤に対する感受性を検討した研究はほとんどない.
【対象と方法】当院の活動性結核患者を対象にLVFX の使用状況と,薬剤感受性を検討した.当院で治療を受けた2014年4月から2018年3月の活動性肺結核の連続83症例(年齢74±21,男性43例,女性40例,初回治療74例)を対象に,カルテベースにLVFX の使用状況と喀痰から培養された結核菌のisoniazid (INH),rifampicin(RFP),ethambutol(EB),streptomycin(SM),pyrazinamide(PZA),LVFX に対する薬剤感受性検査結果を解析した.
【結果】LVFX は初回治療33例(45%)(74±21歳),再治療7例(100%)(73±22歳)に投与されたが,その理由は先行薬剤の副作用が13例(37%),薬剤耐性が1例(3%)であった.薬剤耐性は,多剤耐性(RFP,INH)1例(3%),RFP 0名(0%),INH 1名(3%),SM 0名(0%),EB 0名(0%),LVFX 0名(0%)に認められた.LVFX が投与された症例で,同薬の副作用による治療の中止はなく,菌陰性化率は100% であった.
【結論】対象症例においてLVFX 耐性はなかった.またLVFX 投与群においてLVFX の副作用を生じたものはなかった.現状においてLVFX は当地方では薬剤耐性のリスクが低い抗結核薬として使用可能で,副作用の発現頻度は極めて低い.

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© 2020 一般社団法人 日本感染症学会
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