感染症学雑誌
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原著
酵素免疫測定法を用いた新規(1→3)-β-D―グルカン測定試薬の基礎的検討
宮﨑 成美末松 寛之山岸 由佳砂村 栄一郎岩崎 真波田中 敏之三鴨 廣繁
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2021 年 95 巻 4 号 p. 329-334

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抄録

深在性真菌症の診断において,真菌の細胞壁成分である(1→3)-β-D―グルカン(以下,BDG)を測定することが有用とされている.これまで,カブトガニ血球の凝固活性を利用した比濁時間分析法(比濁法)と発色合成基質法(比色法)の2法が実用化されているが,天然資源保護の面で課題がある.そこで,今回我々は,BDG に対し特異的なモノクローナル抗体を用いて開発されたサンドイッチ酵素免疫測定法(ELISA 法)による新規なBDG 測定試薬「イムノテスタBDG」(ELISA 法:積水メディカル株式会社)の基礎的検討を行った. ELISA 法は,正確性,同時再現性,日間差再現性,最小検出限界,希釈直線性,共存物質の影響の試験において良好な結果が認められた.既存の対照法とELISA 法の相関性を検討するため107 検体を用い,β―グルカンテストワコー(比濁法),ファンギテックG テストES ニッスイ(比色法)および本試薬(ELISA 法)でBDG を測定した.ELISA 法と比濁法の相関性は相関係数R=0.938(p<0.001),回帰式y=2.48x+10.6,比色法との相関性はR=0.971(p<0.001),y=0.97x-2.97 であった.比濁法との相関性については傾きが2.48 となり,測定値に2 倍程度の差が認められたが,比色法とELISA 法の相関性は良好であり,カットオフ20 pg/mL による全体一致率も90.7% と良好であった. 本検討結果から,ELISA 法を原理とする本試薬が臨床的に有用であることが示された.

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© 2021 一般社団法人 日本感染症学会
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