感染症学雑誌
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原著
東京において分離された赤痢菌の菌種および血清型と薬剤耐性菌の出現状況(2000年~2017年)
河村 真保村上 昂山梨 敬子小野 明日香小西 典子尾畑 浩魅横山 敬子貞升 健志
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キーワード: Shigella, species, serovar, drug resistance
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2022 年 96 巻 6 号 p. 219-229

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抄録

細菌性赤痢の細菌学的,疫学的特徴を把握するため,2000年~2017年に東京都で分離・収集された赤痢菌を対象に,その菌種,血清型,薬剤耐性菌出現状況について比較検討した.

輸入事例由来584株と国内事例由来215株における菌種別検出頻度は,両由来株ともShigella sonnei,次いでShigella flexneriが高かった.また,新血清型として提案されている赤痢菌が25株分離された.

10種薬剤について実施した薬剤感受性試験では,94.5%がいずれか1薬剤以上に耐性であった.その耐性パターンは全体で57種類認められたが,両由来株ともテトラサイクリン(TC),ストレプトマイシン(SM),スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST)の3剤耐性が最も高頻度であった.調査した18年間でフルオロキノロン系薬剤への耐性頻度の上昇が確認され,また,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株も認められた.国内事例由来株のうち,特定の耐性パターンの集積がみられた株について分子疫学的解析を実施したところ,男性間性的接触者(MSM)関連の広域散発事例であることが判明した.患者情報と組み合わせた菌株の細菌学的・分子疫学的解析結果は,細菌性赤痢の実態把握に有用であった.今後も赤痢菌株の解析を継続して行い,情報を発信していくことが必要であると考えられた.

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© 2022 一般社団法人 日本感染症学会
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