感染症学雑誌
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原著
東京都内におけるワクチン導入後の侵襲性肺炎球菌感染症由来菌株の血清型および薬剤感受性(2013年~2022年)
内谷 友美奥野 ルミ有吉 司田淵 優里久保田 寛顕鈴木 淳貞升 健志
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2024 年 98 巻 2 号 p. 134-145

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抄録

2013年から2022年までの期間に東京都内医療機関で分離された侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)由来肺炎球菌(Streptococcuspneumoniae)780株(小児398株,成人382株)を対象とし,血清型別,薬剤感受性試験およびペニシリン(PCG)耐性遺伝子型別を実施した.調査期間を1期(2013~2016年),2期(2017~2019年)および3期(2020~2022年)に分け血清型を比較した結果,1期から3期の間で,小児ではPCV13血清型の割合が19.4%から1.2%へ有意に低下し,成人ではPPSV23血清型の割合が76.2%から44.4%へと有意に低下していた.薬剤感受性試験において,PCG耐性率は1期の25.5%が2期19.1%に低下したが3期では30.3%に上昇した.また,PCG耐性遺伝子型においてgPRSPの割合は同様に推移した.非PCV13型で,PCG耐性率が高い血清型として,15A,23Aおよび35B等が認められ,2020年以降増加傾向の35BはPCG耐性率が1期から3期の間で69.0%で,3期のみの耐性率は87.5%であった.一方で,エリスロマイシン(EM)の非感受性率は2~3期において低下傾向にあった.35Bは全株がEM非感受性で,61.9%はメロペネム非感受性であった.

以上より,ワクチン導入後,東京都における血清型分布は小児,成人ともにワクチン型の割合が低下した.また,菌株のPCG耐性率が再び上昇傾向を示したのは,35BをはじめとするPCG耐性率の高い非ワクチン型の血清型が増加したためと考えられた.

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