感染症学雑誌
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細胞融合法によって作成された日本脳炎ウイルスに対するモノクローナル抗体の性状
長谷川 均
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1982 年 56 巻 10 号 p. 855-866

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抄録

日本脳炎 (JE) ウイルスの免疫学的性状を解析するため, P3X63 Ag 8.653細胞とJEウイルス中山・RFVL株免疫r7ウス脾細胞をポリエチレングリコールを用いて融合させ, 26系統の赤血球凝集抑制 (HI) 抗体を産生するハイブリドーマを得た.
これらの抗体は, JE, Murrayvalley脳炎 (MVVE), west Nile (WN), st.Louis脳炎 (SLE), Russianspring-summer脳炎およびDengue-1の6種のHavivirus抗原に対するHI試験によって, (1) JEだけに反応する種特異性抗体, (2) JEとMVEにだけ反応する抗体, (3) JE, MVE, WN, SLEの3ないし4種に反応する抗体, (4) 6種全部に反応する属特異性抗体の4群に大別された.
これらのうち, 種特異性抗体は, 中山-RFVL, 中山-予研, JaGAr 01および上山の4株のJEウイルス抗原に対してHI試験を行った結果, (1) 中山株にのみ反応する株特異性抗体, (2) 中山株と上山株に反応し, JaGAr 01株には反応しない抗体, (3) 中山株とJaGAr 01株に反応し, 上山株に反応しない抗体, (4) 4株すべてに反応する抗体が認められた. これらの成績から, 中山-RFVL株と中山-予研株には, HI試験の至適pHの相違などはあっても, 抗原性の差はほとんどなく, 他方, 中山株, JaGAr 01株・上山株の間には, それぞれ抗原性の差が認められた.
Igクラスの検討より, IgM抗体には, 株特異性抗体が多く含まれ, IgG抗体には, 種特異性あるいは属特異性およびそれらの中間型の抗体が多く含まれた.

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