感染症学雑誌
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1980年から1981年にかけてのインフルエンザの流行について
武内 安恵大谷 明薩田 清明
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1982 年 56 巻 3 号 p. 182-192

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抄録

1976年から1981年の5年間のインフルエンザ様疾患の週別発生状況および1980年から1981年の流行についてウイルス学的, 血清学的に検討し, 次のような成績が得られた
1) 5年間の発生状況をみると, いずれの流行年においても, その発生のピークは1月下旬から2月下旬に認められた.
2) 1980年から1981年にかけての流行で1,100株のウイルス株が分離された.その型別の内訳はH1N1型が718株 (65.3%), H3N2型が150株 (13.6%), B型が232株 (21.1%) であった
3) 分離されたいずれの型にも, 1980年度の市販ワクチンの株との間に抗原変異の認められるウイルス株が若干含まれていた.
4) とくに, B型株の中で抗原変異の比較的大きかったB/滋賀/75/81株と類似の株が, 滋賀県, 京都府, 岐阜県などの地域で分離された.
5) 1980年度のB/神奈川/3/76株の含まれているワクチンの接種前と接種1ヵ月後の血清について抗原変異のみられるB/滋賀/75/81株と, B/神奈川/3/76株と1981年度のワクチン株B/シンガポール/222/79株に対するHI抗体価と比較すると, B/滋賀/75181株とB/神奈川13/76株ではかなりの差異がみられるが, B/滋賀/75/81株とB1シンガポール/222/79株では余り差異はみられないので, フクチンの効果はかなり期待できるものと思われる。

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