感染症学雑誌
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腟内細菌の臨床細菌学的研究第5報妊娠及び腟炎に伴う腟内細菌叢の変動について
大橋 浩文
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1982 年 56 巻 8 号 p. 647-654

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抄録

妊婦及び膣炎に罹患している婦人の腔内細菌叢を, 膣炎のない非妊婦のそれと比較検討し, 妊娠及び腔炎に伴う膣内細菌叢の変動について検討した.
対象は昭和52年10月から昭和56年9月までの4年問に中央鉄道病院産婦人科外来を受診した20~60歳の腔炎のない非妊婦218名, 膣炎のない妊婦219名そして膣炎を有する婦人119名の計466名である.
非妊婦に比し, 妊婦の膣内にはLactobacillusが有意に高く検出され (p<0.001), Candida albicans, Propionibacteriumの検出率も有意に高かった (p<0.005, P<0.01) がE.coli, Peptococcm, Bactmidesの検出率は有意に低かった (p<0.001, p<0.01, p<0.01).また, 膣炎を有する婦人は, 腔炎のない婦人に比し, Lactobacillmの検出率が有意に低く (p<0.001), Candida albicansの検出率が有意に高かった (p<0.001).妊婦の腔内細菌叢の妊娠期間による変動は認めなかった.
膣炎のない非妊婦とカンジダ腔炎婦人との膣内細菌叢はその検出率に差を認めなかった.しかし, 膣炎のない非妊婦に比し, 非特異性腔炎婦人の細菌叢では, Lactobacillusの検出率が有意に低く (p<0.001), Peptococcus, Peptostreptococcm, Veillonella, Bacteroidesなどの嫌気性菌が高頻度に検出された (p<0.001, p<0.001, p<0.01p<0.05).
以上, 膣内細菌叢は妊娠や膣炎, 特に非特異性膣炎により変動することを認めた.

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