感染症学雑誌
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病原性赤痢菌と非病原性赤痢菌の拮抗性について
坂口 武洋坂口 早苗中村 磐男鏡 光長岡本 正孝安斎 博
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1983 年 57 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

32P標識病原性赤痢菌 (32P -Shigella flexneri 2b 17-A) と32P標識非病原性赤痢菌 (32P-Skigella flexneri2b 17-N) を用いて, 感染初期の菌の侵入状態および同種間の感染拮抗現象の発現時期について検討した.
標識病原性菌をHeLa細胞に接触させると, 30分後から細胞に取り込まれる放射能は上昇し, 以後経時的な増加が認められた. これに対して, 標識非病原性菌では, 培養時間にかかわらず, 終始0分のときの計数率と同じであった. 標識病原性菌と標識非病原性菌または無標識非病原性菌を混在接触させた場合には, 60分後まで計数率の著明な上昇はみられず, 120分後でも標識病原性菌を単独に接触した時の放射能の約半分であった. しかし, この拮抗現象ではアルコールで処理した非病原性の死菌では観察されなかった.
モルモットの腹腔Adherent細胞 (マクロファージ: MP) に標識赤痢菌を接触させると, 病原性・非病原性にかかわらず, すみやかに細胞の計数率は上昇し, 接触30分以内に頂点に達し, 以後著しい変動はみられなかった. 一方, 光学顕微鏡下で観察すると30分以後も貪食率の増加を示したが, これは主にMP内で菌が増殖したためと思われる. これらの標識病原性菌および非病原性菌を混在させても, MPの計数率は単独に接触させた場合と同様であった.
以上, 標識赤痢菌の放射能を測定することにより, Skigella flexneri 2b 17-AのHeLa細胞感染をShigella flemeri 2b 17-Nが, 感染初期に抑制することを確認した.

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