感染症学雑誌
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リステリア菌4c型による化膿性髄膜炎の1症例
永井 龍夫近藤 裕之貫名 正文
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1986 年 60 巻 3 号 p. 267-270

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抄録

わが国でヒトのリステリア症がはじめて見出された1958年から1984年までの26年間に全国各地で発生した症例の累計は489症例に達している.これらの症例患者から分離されたリステリア菌のうち, 血清型の確定しているものは470菌株である.
470菌検の血清型別の内訳は4b型が285株で最も多く, 次いで1b型の145株で, そのほかの血清型 (1 a, 2, 3, 4 a, 4 c, 4 d) はきわめて稀である.
著者らは1984年8月, 神戸市神鋼病院に入院した化膿性髄膜炎の患者 (67歳, 女性) の髄液と血液からリステリア菌を分離, 血清型を検査した結果, わが国におけるヒト由来としてははじめての4c型と同定した.
そこで患者の臨床経過, 分離菌株 (福島株) の細菌学的検査, 血清型検査 (標準菌株の免疫血清を用いた定量凝集反応および吸収試験) の概要を報告する.
患者は肝硬変, 糖尿病などの重篤な基礎疾患を有し, その末期にリステリア菌感染症が重なったので死亡した.しかし病理解剖は行われなかった.
なおリステリア菌の患者への感染経過については不明である.

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