感染症学雑誌
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一小児科外来診療における溶血性連鎖球菌感染症の長期的研究
患者の概要, 診断, 分離菌株について
村井 貞子稲積 温子野上 和加博懸 俊彦徳丸 実村田 篤司
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1987 年 61 巻 4 号 p. 471-481

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抄録

第一線の小児科診療における溶血連鎖球菌 (溶連菌) 感染症の現状を知る目的で, 1975年5月より愛媛県松山市内の一小児科医院を訪れる患者の研究を続けている. 1985年3月までに, 溶連菌感染症の疑いで培養を行ない陽性であった2, 373例について, その患者の概要と, 診断, 分離菌型等について報告する.
1) 分離菌株の96.2%はA群溶連菌であり, 診断別では咽頭炎68.1%, 猩紅熱は31.2%であった.
2) 4月から翌3月までを一年度とした場合, 月別の患者数の分布には, 5, 6, 7月を中心とする小さな初夏の山と, 10, 11, 12月を中心とする冬の山の2峰が存在した. 年齢分布及び菌型推移から考えると, 一菌型の流行は冬に増幅され, 更に初夏に感受性の高い若年者に広がった後, 徐々に終息すると考えられる.
3) A群の主要流行菌型は, 12型, 4型, 1型であり, 5~6年毎に流行の極期を迎える周期を示している.
4) A群菌のT型別率は99.6%, M型別率は67.9%であった. 又T型とM型の一致率は菌型により異なり, 次の如くであった. 3型97.9%, 6型97.7%, 4型92.4%, 1型91.3%, 12型79.9%.
5) M12型は他の菌型に比較して統計的に有意に高い割合で猩紅熱を起した.
6) 12.9%の患者はこの間に再感染を起しており, 病初期の抗生剤の投与が, 抗体産生を抑制していることが予想された.

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