感染症学雑誌
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小児骨髄移植における腸内殺菌の検討
矢部 普正矢部 みはる満田 るみ星 伸和尾崎 和代石丸 裕司勝田 真理子金 竜一松田 倫夫加藤 俊一木村 三生夫山本 敬子谷口 泉沢村 貞昭小澤 敦
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1988 年 62 巻 6 号 p. 527-533

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抄録

29例の小児骨髄移植患者において, 腸内殺菌としてVapcomycin 750mg/m2/day, Polymyxin B300万単位/m2/day, Nystatin 150万単位/m2/day (VPN), あるいはNystatinをAmphotericin B150mg/m2/day (VPA150) または500mg/m2/day (VPA500) に変更して投与した.全ての投与群において腸内菌叢の消失が得られたが, VPN投与群およびVPA150投与群ではCandidaがそれぞれ14例中10例, 5例中5例に検出され, うち1例はCandidaの全身感染症で死亡した.VPA500投与群においてはCandidaは10例中1例に検出されたのみでAmphotericin Bの増量は有効であると思われた.
各群における緑膿菌の検出頻度をみるとVPN投与群では14例中3例, VPA150投与群が5例中1例であったのに対し, VPA500投与群は10例中5例と増加しており, VPA500投与群の1例は緑膿菌の壊疽性膿瘡から敗血症を発症して死亡した.
それぞれの検出部位をみるとCandida, 緑膿菌とも検出例では咽頭から肛門にわたって検出される例が散見され, 抗生剤, 抗真菌剤のネブライザーに加えて含漱などの処置も考慮すべきと思われた.
結果としてCandidaに対してはVPA500の投与が有効であったが, 緑膿菌対策は今後の重要な課題と思われた.

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