感染症学雑誌
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インフルエンザワクチンの効果に関する疫学的研究
小学校児童および慢性の基礎疾患を持つ小児の欠席状況の比較から
薩田 清明
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1991 年 65 巻 1 号 p. 110-118

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抄録

1988年度のインフルエンザワクチンの効果を, 1988-1989年の流行期に埼玉県下の小・中学校児童およびその中から疾患を有する児童を選び, ワクチン接種回数別に欠席状況を統計学的に検討し, 次のような成績を得た.
1) ワクチンの接種状況は0回群 (71.2%) の方が2回群 (19.3%) や1回群 (9.6%) よりも有意に多く認められた.
2) 有疾患者は31,941名中1,048名の3.3%に, また各群の全対象者に占める割合は2回群が 2.5%, 1回群が2.7%, 0回群が3.6%を示し, 疾患をもたない児童も各群に約96%認められた.
3) 3群間に占める呼吸器系, 循環器系の疾患者の割合に差は認められなかった
4) 欠席率, 延べ欠席率をみると全対象者, 有疾患者のいずれの3群の比較でも, 0回群の方が2回群よりも有意に高いことが認められた.
5) 平均欠席日数の上でも, いずれの対象でも0回群の方が他の2群よりも有意に多いことが認められた.
6) 欠席日数区分別にみると, 2日間以下では2回群の方が0回群より多く, 3日間以上では, 逆に2回群が最も少なく, 0回群が最も多く, 1回群は両群の中間的傾向を示した.
以上のごとく, 有疾患者の間でもワクチンの接種が各種の欠席状況を低く, また少なくする上で効果的に作用したものであり, 例えインフルエンザウイルスに感染し発症をみても, 接種者ではその症状が軽症化し, 短日の欠席で登校が可能であることを, 逆に未接種者では発症 (熱) 期間も長く続き, 欠席日数が多くなる傾向を示したものである.従って, 1988年度の市販HAインフルエンザワクチンの有効性を強く示唆しているものと考える.

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