感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
消滅する病名猩紅熱
過去16年間の統計的観察
滝沢 慶彦冨沢 功伊藤 勝美
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 65 巻 8 号 p. 996-1002

詳細
抄録

過去16年間 (昭和48年-63年) に当院における狸紅熱患者11,119名について統計的に観察した.結果は次のごとく要約された.1) 昭和56年以降患者数は激減し平成元年には0となった.患者は冬季に多く発生し夏季に少なかった.3歳-8歳が82%を占め平均年齢は5.8歳であった.2) 症状は38℃ 以上の発熱者は81.4%(昭和51年), 発熱期間2日-5日86.6%(同), 発疹は中等度以上が68.2%, 強度の咽頭発赤が29.9%, 苺舌が86.3%, 口角炎が37.7%であった.しかし, 最近の統計 (昭和57年-63年) では症状の強い症例のみを選択的に入院させる傾向が見られた.3) ASO値が上昇する割合は年齢が高いほど, また寒冷期間ほど高くなっていた.CRP値は (-)-(6+以上) まで広く分布し, 平均値は2.4+であった (昭和51年).4) 明瞭な腎炎は見られなかったが無症候性腎炎は1.1%に検出された.重篤な合併症は稀であった.5) 退院後の再排菌は3.1%に見られた.6) 狸紅熱の再発症の症例は6.7%に認められた.菌型の判明した65例のうち前回と異なった菌型による再感染例が80.0%を占めていた.7) 分離菌型はT12型 (44.5%), T4型 (24.1%), T1型 (8.2%) が主要菌型で約5~7年の間隔で流行する傾向にあった.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top