感染症学雑誌
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健康人における感染防御機構としての咽頭常在菌叢, 特に口腔レンサ球菌群の位置づけ
藤森 功山田 俊彦菊島 一仁後藤 領荻野 純久松 建一村上 嘉彦
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1992 年 66 巻 12 号 p. 1634-1638

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抄録

口腔常在細菌叢の主な構成菌種であるα-レンサ球菌の病原菌発育抑制作用についてA群レンサ球菌 (教室保存株, 6-22nonmucoidT-12) を指示菌として健康人を対象に検討した.
A群レンサ球菌に対し, 抑制力を有するα-レンサ球菌の検出率は, 学童, 大学生, 高齢者と加齢に従って高くなっていたが, 未就学児は学童より高検出率を示した.この細菌学的成績はA群レンサ球菌による扁桃炎罹患頻度や血清学的所見における年齢的な推移に相関することを示唆していた.
さらに, 抑制力の著明な (拡散性の抑制力を有する) α-レンサ球菌 (S.salivarius) ではA群レンサ球菌 (mucoid) をはじめとして, H.influenzae, Spneumoniae, group C Streptococcusに対しても90%以上の菌株が抑制力を有し, その他の検討した病原菌に対しても40%~70%の菌株が抑制力を示した.上気道炎において検出頻度の高い病原菌に対し, 抑制力を示す菌株がα-レンサ球菌の中に高率に認められることから, これらの菌株の上気道炎に対する感染防御としての意義を明確にし, 臨床応用することが今後の課題であると考えられた.

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