感染症学雑誌
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東京において1980~1989年に分離された海外及び国内由来サルモネラの血清型と薬剤耐性
松下 秀山田 澄夫稲葉 美佐子楠 淳工藤 泰雄大橋 誠
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1992 年 66 巻 3 号 p. 327-339

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抄録

1980~1989年の最近10年間に, 東京においてヒトから分離された輸入症例よりの海外由来, 及び国内由来のサルモネラ計6,816株について, その血清型と薬剤耐性の面から比較検討した.
血清型別の結果, 供試サルモネラは22の0群, 156種の血清型 (海外由来125, 国内由来112血清型) に分類された. 主要血清型は, 海外由来株ではAnatum, Derby, Blockley, Agona, Typhimuriumなど, また国内由来株ではLitchfield, Typhimurium, Hadar, Infantis, Thompsonなどであった.
CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, NFLXの9種薬剤に対する耐性試験の結果, 海外由来株で2,628株中739株 (28.1%), 国内由来株で4,188株中1,047株 (25.0%) が供試薬剤のいずれかに耐性であった. 年次別に耐性菌の出現頻度をみると, 両由来株とも1980~1983年までは20%以下と低率で推移したが, 以後, 毎年上昇傾向を示し, 1989年には40%以上が耐性であった.
10年間に30株以上検出された主要血清型別に薬剤耐性菌の出現状況をみると, 海外由来株ではHadar (96.3%), Blockley (92.0%), Typhimurium (75.7%), Kentucky (64.1%), Krefeld (59.3%), Panama (58.3%), 国内由来株ではHadar (97.5%), Blockley (57.4%), Litchfield (44.6%), Enteritidis (44.4%), Muenchen (42.2%), Typhimurium (40.9%) の順で高率であった.
薬剤耐性菌の耐性パターンは, 50パターンと多彩であったが, その主要なものは海外由来株でTC・SM, CP・TC・SM・KM, TC単剤, CP・TC・SM・KM・ABPC, SM単剤, 国内由来株でTC・SM, TC単剤, TC・SM・KM, SM単剤, CP・TCであった.
1988~1989年に分離された海外由来の薬剤耐性菌の170株を対象に検討した接合伝達性Rプラスミドの保有率は12.4%であった.

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© 日本感染症学会
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