感染症学雑誌
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医療従事者におけるC型肝炎ウイルスの感染
宮島 一郎佐田 通夫村島 史朗鈴木 宏近藤 重信伊藤 雄二川野 祐幸谷川 久一
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1997 年 71 巻 2 号 p. 103-107

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抄録
福岡県はC型肝炎ウイルス (HCV) 抗体の陽性率が, 他の地域に比べて高く, 従って, 久留米大学病院では, C型の慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌の患者を治療する機会も多い.そこで我々は, HCV高度感染地区の医療従事者は, HCVに対する感染の頻度が高いか否かを明らかにするために, 久留米大学病院職員1638人を対象にHCV抗体の測定を行った.HCV抗体の陽性率は, 2.8%(46人), HBs抗原の陽性率は, 1.1%(18人) であった.HCV抗体の陽性率は, 福岡県における一般住民の陽性率と差がなかった.医療職種別, 性別でみたHCV抗体の陽性率にも差を認めなかった.一方, HCV抗体の陽性率は, 勤務年数が上昇するにつれて有意に上昇したが, この上昇は, 医療に従事していることが関連しているのではなく, 加齢の関与が考えられた.以上の結果から, HCV高度感染地区の医療従事者がHCVに必ずしも高率に感染しているわけではないことが明らかになった.
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