感染症学雑誌
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HTLV-1抗原検出系からみたHTLV-1キャリアー妊婦の解析
佐藤 洋一川名 尚石川 晃一本多 洋速水 正憲
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1997 年 71 巻 2 号 p. 136-142

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抄録

HTLV-1のキャリアーは九州を中心とする西日本の高率に分布し, 低率ながらも東日本にまで広く分布している. 今回は, 東日本の母子感染のハイリスク群を特定するべくHTLV-1キャリアー妊婦についてそのリンパ球を培養して抗原の出現を検討することにより, 感染病態を解析した.
HTLV-1抗原は, PA法で陽性と判定した妊婦64検体中抗原陽性40検体 (62.5%), EIA法で抗体陽性と判定した検体55例中40検体 (67.8%) より抗原を検出した. WB法により抗体陽性の53例中40例 (72.7%), IF抗体陽性による62例では, 41例 (66.1%) にそれぞれ抗原が検出された. 抗体検出法によりやや差はあるが, 全体として約70%に抗原が検出された. IF抗体価20倍以上では14例中12例 (86%) で, 5-10倍では26例中16例62%で, 抗体価の高い方に抗原検出率が高い傾向があった.
キャリアー妊婦40例から生まれた児のうち2例 (5%) の臍帯血リンパ球に抗原が検出された. 母体血中プロウイルスが陽性40例中より生まれた児のうち3例 (7.5%) が陽性であった. これらの児はいずれもリンパ球の培養により抗原が検出された母体より生まれており, このような母は母子感染のハイリスク群と考えられた.

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