感染症学雑誌
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Polymerase chain reaction法を用いた患者検体からのAspergillus fumigatus rDNA検出による肺アスペルギルス症の診断
大峠 和彦宮西 節子相原 雅典松尾 収二
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1997 年 71 巻 6 号 p. 507-512

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抄録

Aspergillus fumigatusに特異的な26S r/intergenic spacer領域の塩基配列から設定したプライマーを用い, polymerase chain reaction (PCR) 法によるアスペルギルス症の診断を試みた.
PCR法の基礎実験では最少検出感度は1pgであり, A.fumigatusのみを特異的に増幅した.
本法の臨床的意義を検討する目的で, 肺アスペルギルス症13症例 (18検体) および非アスペルギルス症24症例 (36検体) を対象として培養法, アスペルギルス抗原および抗体検査の成績と比較検討した.その結果, 肺アスペルギルス症13症例中8例がPCR法陽性となり, 培養法陽性 (A.fumigatus) 6症例, 抗原陽性2症例および抗体陽性6症例に比べ高い診断感度を示した.アスペルギルス症でありながらPCR法陰性となった5症例の内訳は, 2例がA.fumigatus以外のアスペルギルス症, 2例が抗体のみ陽性, 残り1例が抗原陽性であった.
非アスペルギルス症24症例中PCR法陽性となったのは2症例であり, その内訳は1例が培養でA.fumigatusが検出された誰気管支炎例, 他の1例が大葉性肺炎例であった.本法はA.fumigatus症を特異的に診断し, 培養法, 抗原および抗体検査との成績の比較においても有用性が確かめられた

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