感染症学雑誌
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高齢者におけるインフルエンザ流行とインフルエンザワクチンの効果: 1995年度流行時における解析
池松 秀之鍋島 篤子角田 恭治山路 浩三郎林 純後藤 修郎岡 徹也白井 洸山家 滋柏木 征三郎
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1998 年 72 巻 1 号 p. 60-66

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抄録

高齢入院患者におけるインフルエンザ流行の影響とインフルエンザワクチンの予防効果について, 1995年インフルエンザ流行時について検討した.
院内感染対策の一環として発熱患者の発生について継続調査を行っている対象病院において, 1994年と1995年の週間発熱患者発生数で, 1995年第3週と第8週の発熱件数が, 他の週に比し著しく上昇しており, インフルエンザ流行は発熱の原因として大きな因子であると考えられた.Aホンコン型, Aソ連型, B型のいずれか一つにでも罹患した患者は, 60歳以上のインフルエンザワクチン非接種者において, 48.7%と高率であった.インフルエンザウイルスに対する流行前のHI抗体価が, 32倍以下の入院患者には多数の罹患者が見られたが, 128倍以上の患者には, いずれの型のインフルエンザに関しても罹患者が見られなかった.発熱患者の発生頻度は, インフルエンザワクチン接種者86人では32.6%で, 非接種者123人における49.6%に比し表有意に低かった (p<0.05).9カ月間の調査で, インフルエンザワクチン接種者における死亡者は4例 (4.9%) で, 非接種者では12例 (9.8%) であった.
以上の成績より, インフルエンザ流行は, 高齢者において重要な問題であり, インフルエンザワクチン接種は罹患予防に有効であると考えられた.インフルエンザワクチンには, 罹患予防効果と共に, 死亡予防効果も期待され, 高齢者には積極的に接種を行うべきであると思われた.

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