感染症学雑誌
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日本における近年の日本脳炎患者発生状況
厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票 (1982~1996) に基づく解析
松永 泰子矢部 貞雄谷口 清州中山 幹男倉根 一郎
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1999 年 73 巻 2 号 p. 97-103

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抄録

実験室診断による日本脳炎の確認患者および典型的死亡例について, 1982年から1996年までの15年間分を集計した.患者は合計324名 (男性167名, 女性157名) で, 年次別の性別発生数には有意差がなかった。年間患者発生数は, 1991年までは13~54名であったが, 1992年以降は10名未満に留まっている.患者の年齢構成は, 0~9歳;43名 (13%), 10~39歳;30名 (9%), 40~69歳;161名 (50%), 70歳以上;90名 (29%) と, 高齢者の割合が高かった.男性患者のピークが50歳代であったのに対し女性患者のそれは60歳代とより高齢であった.患者の地域分布は九州が152名 (47%) でもっとも多く, 中国・四国が62名 (19%), 近畿が61名 (19%), 中部・北陸・関東合計で49名 (15%) であった.沖縄及び東北・北海道からは患者の報告はなかった.発病時期は7月下旬から10月下旬までであり, 8月下旬が110名で最も多かった.患者の予後は, 全治31%, 死亡17%, 後遺症48%, 不明その他4%であった.予防接種歴は, 95%が非接種または接種歴不明であり, 以前接種, 1回だけ接種という不完全接種4%, 接種歴有りと記載されたのは4名 (1%) のみであった.1965年の調査と比較すると, 患者の著しい減少特に小児患者の減少は, 予防接種に負うところが大きいと考えられる.

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