感染症学雑誌
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高齢神経疾患患者におけるインフルエンザワクチンの効果と安全性の検討
加地 正英津留 俊臣大泉 耕太郎
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2001 年 75 巻 5 号 p. 411-415

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抄録

60歳以上の高齢神経疾患患者105例にインフルエンザワクチンを接種し血清の赤血球凝集抑制 (Hemagglutination Inhibition: HI) 価の推移と副作用を検討した. HI価に関しては, インフルエンザワクチンの1回接種でも, 十分な抗体上昇が見られた. またコントロール群 (非神経疾患および健康成人) 134例のHI価と比べても同程度の上昇が認められた. しかし両群ともに前年ワクチンを接種していた症例がありA香港型 (H3N2) に対して約70%が接種前にすでに128倍以上のHI価を有しており, また昨年のインフルエンザA (H3N2) 流行に際して感染していた可能性も推測されるが, いずれにしてもこの様な高いHI価の症例では接種後にHI価の上昇がみられない例があった.
一方局所の副作用 (発赤・腫脹など) の頻度はコントロール群の被接種者と変わらず, その程度はむしろコントロール群より軽度である傾向がみられた. また発熱等の全身的な副作用は今回検討した症例は高齢神経疾患群にはみられず, コントロール群で1名に38℃の発熱が認められたが, 翌日には軽快した. その他重篤な副作用はいずれの群においても認められなかった.
接種者の一部については流行期間中, 感染の有無を調査したところ, 高齢神経疾患患者21例中6例にHI価の上昇が認められたが, インフルエンザ症状を呈した症例はなかった.

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