感染症学雑誌
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埼玉県における2000年のエンテロウイルス71型分離株について
篠原 美千代内田 和江島田 慎一瀬川 由加里星野 庸二
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2001 年 75 巻 6 号 p. 490-494

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抄録

埼玉県ではここ数年, 手足口病患者等から, 主にコクサッキーA16型 (CA16) が分離されてきたが, 2000年は髄膜炎の併発が多数報告され, エンテロウイルス71型 (EV71) が多く分離された. そこで, 2000年のEV71分離株の遺伝子配列をこれまでの分離ウイルスと比較した.
2000年に分離されたEV71, 14株の5'NCRからVP2にかけての約700塩基の配列の解析から今年の分離株は3つに分類できた. 第1は台湾株TW/2086/98, NCKU9822に89~91%の相同性を持つグループであり, 第2は両台湾株と最も高い相同性 (93~94%) を持つグループであった. この2グループはより大きい1グループともみなしうるものであった. そして, 第3はシンガポール分離株18/Sin/97, 13/Sin98に高い相同性 (93~95%) を持つグループであった. 第3のグループはneurovirulent株であるMS/7423/87に近いウイルス群であった.
検体の採取地区と分離株の系統樹から, 西部地区では台湾株類似株が, 南部地区ではシンガポール株類似株が分離されたことが判明した. また, 無菌性髄膜炎併発患者からの分離株はシンガポール株類似株であった. 2000年の分離株はいずれも過去の埼玉県分離株とは遺伝子的に相違しており, また, この中にneurovirulent株類似の株が存在していることが判明した.

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