2003 年 77 巻 4 号 p. 227-234
深在性真菌症の高感度診断法として, 菌体の細胞壁構成成分の (1-3)-β-D-グルカンの測定キットが, 現在数種実用化されている. しかしその測定値の乖離が問題となっている.
測定値乖離の問題を検討するため, 119症例, 289検体を用い, 同一検体について4種の (1-3)-β-D-グルカンの測定法で測定し, 臨床データと照合させて比較し, 考察した.
深在性真菌症確定診断群, 疑い群で陰性を示した症例は, クリプトコッカス症1例とアレルギー性気管支肺アスペルギルス症2例 (以上, 4種とも共通), 肺アスペルギローマ1例 (MARUHA法, WAKO法, FUNGITEC-G法の3法) であった.(1-3)-β-D-グルカンの測定結果で陰性を示す場合, これらの症例が含まれている可能性がある.
一方FUNGITEC-MK法では, 否定群であるにもかかわらず, 陽性判定の割合の多いこと, すなわち偽陽性の多いことが認められた. FUNGITEC-MK法だけが陽性で他の3法ではいずれも陰性を示した症例は23% (対全症例数) に達した. その結果, 感度は4種とも差が認められなかったが, FUNGITECMK法だけが偽陽性が多いため, 特異性, 診断効率, 陽性的中率は他の3種の方法に比べていずれも著しく低い値を示した. FUNGITEC-MK法には非特異反応検出に起因すると思われる異常な測定値を含むことが示唆された.