感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
日向市の新設温泉施設を感染源とするレジオネラ症集団発生
藪内 英子縣 邦雄
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 78 巻 2 号 p. 90-98

詳細
抄録

宮崎県日向市の日向サンパーク温泉「お舟出の湯」は, 平成14年6月20, 21日に各200人ずつの体験入浴を実施後, 7月1日に正式開業したが, レジオネラ症集団発生のため7月24日に営業停止となった. 6月20日から7月23日までの入浴者19, 773名のうち295名が発症し, そのうち34名が, 喀痰培養陽性, 尿中レジオネラ特異抗原陽性, Legionella pneumophila SG1に対する血清抗体価有意上昇の何れか1つまたは2つにより確定診断され, うち7名が死亡した. L. pneumophila SG1が患者喀痰と浴槽水から検出され, Sfi Iによる患者株と浴槽水株のDNA切断像が一致したことから, 「お舟出の湯」が感染源と確定した.
日向市設置の「日向サンパーク温泉施設レジオネラ菌原因等究明委員会」は集団感染の原因として: 宮崎県の委員会が推定した8項目の他に (1) 施設関係者のレジオネラ症に対する知識と認識の不足,(2) 施設完成時, 試運転後の配管内の水の滞留とレジオネラ属菌増殖の可能性, および (3) 体験入浴前の循環系統全体の消毒・清掃が不十分の3項目を加え, 全11項目を指摘した. 改善対策として: (1) 維持管理マニュアルの整備, (2) 浴槽水の溢水の確保,(3) ろ過装置の消毒の徹底, (4) 浴槽水の残留塩素濃度の測定と維持, 及び (5) ろ材を多孔質セラミックから砂に変更, など全24項目を指示した.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top