感染症学雑誌
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カキのノロウイルス汚染経路に関する検討
齋藤 幸一佐藤 直人高橋 朱実堤 玲子佐藤 成大
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2006 年 80 巻 4 号 p. 399-404

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抄録

ノロウイルス (NV) 胃腸炎の主な伝播経路は, ヒトーヒト感染と食品を介する感染で, このうち食品を介する感染は食中毒として取り扱われる. NV食中毒では生カキを推定原因食品とする事例が多発している. そこで, カキがNVに汚染される経路について検討することを目的に, カキ養殖が行われている1閉鎖湾を対象として, 2001年10月から2004年3月までの30カ月間, 下水処理施設, 河川, 海などの水系とカキからNVの検出を試みるとともに, 同時期に当該地域で発生した小児の胃腸炎症例由来のNVと塩基配列の比較を行った.
その結果, 調査期間中に下水, 河川水, 海水, カキ及び胃腸炎の小児から総計208株のNVが検出された. NVは下水処理施設の流入水からはほぼ年間を通して検出され, 他の検査材料からは主に冬季に検出された. 検出されたNVは遺伝子的に多様で, その中には優勢に検出される株 (優勢株) が存在した. 優勢株は検査材料間に共通するものが多く, 特に, 2002/03シーズンは下水, 河川水, カキ及び胃腸炎患児の糞便の各優勢株が同一であった. 一つの流行シーズンに検出された株は次の流行シーズンが始まる11月, 12月を境に異なる株に入れ替わり, 流行シーズンごとに検出されるNVの種類が異なっていた. 今回の検討により, 小児から検出されたNVと環境水及びカキから検出されたNVとの問に明瞭な関連性が認められ, ヒトから排泄されたNVが下水処理施設や河川を経て海に到達し養殖中のカキがNVに汚染されることが確認できた.

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