感染症学雑誌
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塩化メチルロザニリン (ゲンチアナ紫) の血液由来真菌 (カンジダ属, トリコスポロン属) に対するin vitro抗菌作用
近藤 成美山田 俊彦佐藤 尚武西園寺 克小栗 豊子猪狩 淳
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2006 年 80 巻 6 号 p. 651-655

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抄録

目的: 血液由来検体より分離される病原菌のうち, 黄色ブドウ球菌, 緑膿菌, カンジダが3大起炎菌とされる. これまで我々は, 塩化メチルロザリニンの有効性を主にMRSAを対象に報告してきた. 今回はカンジダ属を中心に真菌へのMICから見た有効性の基礎的検討を行った.
対象と方法: 血液由来のCandida alhicans40株Candida parapsilosis32株, Candida glabrata10株, Candida tropicalis13株, Candida guillermondii5株, Candia krusei1株, Candida lusitaniae1株, Trichosporonspp. 4株を対象とし, 菌株に対するMIC測定は, 塩化メチルロザリニンを加えたサブロー培地を用いた寒天平板希釈法によった.
結果: 塩化メチルロザニリンのC. albicansおよびC. tropicalisに対するMICは, 全て1μg/mL以下であった. 一方, C. glabrataに対するMIC80は10μg/mL, C. parapsilosis, Trichosporonspp. に対するMICは, 100μg/mLであった.
考察: 真菌とくにカンジダ属は主に表在的感染症として口内炎, 食道炎, 膣炎, おむつかぶれなどの原因菌として知られ, ときに全身感染症を来たし重篤化することがある. 今回, 塩化メチルロザリニンのカンジダ属に対するMICが極めて低い濃度を示したことから, 使用にあたっての安全性のみならず臨床的有効性もさらに検討する必要がある. なおMRSAとの同時検出例もしばしば報告されており, MRSAに対する塩化メチルロザリニンのMICも極めて低値であることから, 塩化メチルロザリニンは, 院内感染対策の有効な薬剤の一つと考えられる

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