感染症学雑誌
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わが国の小児科担当医療従事者における百日咳・ジフテリア菌の感染リスク評価
蒲地 一成遠藤 美代子小宮 貴子豊泉 裕美八柳 潤齊藤 志保子内村 眞佐子杉山 明村上 光一堀川 和美柳川 義勢堀内 善信荒川 宜親諸角 聖高橋 元秀
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2007 年 81 巻 2 号 p. 155-161

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抄録

医療従事者から乳幼児への百日咳・ジフテリア菌の感染リスクを評価するため, わが国の小児科担当医療従事者を対象に両菌の保菌ならびに抗体保有状況を調査した.調査は12医療機関に属する49名の医療従事者を対象とし, 2003年10月から2004年2月の間に2回の抗体価測定, 月1回の菌培養とPCR検査を行った. 細菌学的検査ではすべての医療従事者が陰性を示し, 両菌の保菌者は認められなかった. 一方, 医療従事者の抗体保有率は, 抗百日咳毒素抗体 (抗PT抗体) と抗ジフテリア毒素中和抗体を指標とした場合, 百日咳が50%, ジフテリアが59%であった.調査期間中, 医療従事者16名 (33%) が百日咳患児との接触歴を有したが, 血清診断によりその感染が疑われた医療従事者は1名のみであった.本医療従事者の抗PT抗体価は防御レベル以下であり, 百日咳患児との3回の接触歴を有したが, 百日咳様の症状を呈することはなかった. 今回の調査結果から, 1) 百日咳とジフテリアに対し, 小児科医療従事者の約半数が抗体非保有者である, 2) 小児科医療従事者は百日咳患者と接触する頻度が高いものの患者からの感染頻度は低い, ことが明らかとなった. 百日咳・ジフテリアの院内感染防止には, 医療従事者が各々の免疫防御レベルを認識し, その感染リスクを考慮した感染防止対策を講じることが重要と考える.

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© 日本感染症学会
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