肝臓
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原著
原発性胆汁性肝硬変におけるHealth related quality of life-日本語版PBC-40問診票を用いた検討
柴 慎太郎柿崎 暁佐藤 賢市川 武戸島 洋貴神田 大輔長沼 篤細沼 賢一柳澤 正敏松崎 豊高木 均森 昌朋
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2007 年 48 巻 6 号 p. 256-263

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抄録

[背景及び目的]患者の主観的健康度を数値化したHealth related quality of life(HRQOL)が,慢性疾患に対する種々の医療行為の評価の指標として用いられている.原発性胆汁性肝硬変(Primary biliary cirrhosis,以下PBC)では,HRQOLが低下することが報告されているが,疾患に特異的な問診票を用いたHRQOLの報告はなかった.最近,Jacobyらが,PBCに特異的な問診票(PBC-40)を作成し,その有用性を報告した.しかし,欧米人を対象とした検討であり,日本人患者を対象とした報告はなく,今回我々は,日本人でのPBC-40問診票の有用性について検討したので報告する.
[対象及び方法]対象は,2007年10月から12月の間に,群馬大学医学部付属病院肝臓代謝内科及びその関連施設を受診した連続するPBC患者44名とした.PBC-40の日本語訳(日本語版PBC-40問診票)を作成し,自己記入させ回収した.無症候性PBC群と症候性PBC群に分け,患者背景,血液生化学検査とPBC-40スコアとの関連を比較した.
[結果]PBC患者は,平均年齢60.9±9.9歳,男女比1:4.5,無症候性PBC 27名,症候性PBC 17名であった.PBC-40総スコアの合計は,84.0±28.6点であった.無症候性PBC群では,72.8±18.6点,症候性PBC群では102.1±33.1点で,有意に症候性PBC群で高かった(P<0.01).全PBC患者での各項目別スコアの平均は,症状2.0点,掻痒1.9点,疲労2.2点,認識2.0点,社会性2.0点,感情2.9点で,感情のスコアが他の5項目に比べて有意に高かった(P<0.01).項目別でも,症候性PBC群では無症候性PBC群に比べ,全項目でスコアは有意に高かった.Spearmanの順位相関係数で,PBC-40スコアとALP値,総胆汁酸に正の相関が,Hemoglobin値,プロトロンビン時間,抗ミトコンドリア抗体価とに負の相関がみられた(P<0.05).PBC-40スコアを従属変数とし,相関のみられた5項目を独立変数とした重回帰分析では,ALP値,総胆汁酸,抗ミトコンドリア抗体価がスコアに寄与する有意な因子として挙げられた(P<0.05).
[結論]PBC-40スコアは,症候性PBC患者において有意に高く,客観的指標とも相関していた.日本語版PBC-40問診票は,日本人PBC患者のHRQOL評価にも利用できると考えられた.

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© 2007 一般社団法人 日本肝臓学会
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