抄録
症例1はgenotype 1bのウイルスによるC型慢性肝炎の51歳女性患者.ペグインターフェロン,リバビリン併用療法を施行したところ,投与40週目に血糖値581mg/dlと1型糖尿病を発症し,インスリン療法を施行した.治療前の血糖値,HbA1c値は正常範囲で,抗GAD抗体も陰性であったが,糖尿病発症時には抗GAD抗体は714U/mlと陽転化した.症例2はserotype 1のC型慢性肝炎の58歳男性患者.治療前の血糖値,HbA1c値は正常範囲であったが,抗GAD抗体は陽性を示した.ペグインターフェロン,リバビリン併用療法を施行し,慎重に経過を追ったが糖尿病の発症はみられなかった.当科で抗GAD抗体陰性を確認した後にインターフェロン療法を行った58例のC型慢性肝炎のうち1型糖尿病を発症したのは本報告(症例1)1例のみであった.また抗GAD抗体陽性を確認した後にインターフェロン療法を行ったC型慢性肝炎症例は本報告(症例2)1例のみであった.インターフェロン単独あるいはリバビリン併用療法による1型糖尿病発症は稀ではあるが,大多数が終生のインスリン療法を必要とする重大な合併症であり,その認識は肝要である.しかしながら,C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法により発症する1型糖尿病の予測は極めて困難であり,今後の症例の蓄積と解析が俟たれるところである.