肝臓
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症例報告
肝動脈化学療法併用ラジオ波焼灼療法後,特異な再発様式で急速な進展を呈した肝細胞癌の2症例
伏谷 直益井 芳文小野田 泰村上 重人中島 尚登田尻 久雄
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2011 年 52 巻 11 号 p. 732-744

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抄録

症例1はアルコール性肝障害の78歳男性.肝S5/8に径30 mmの肝細胞癌としてはCT・MRI画像上非典型であり,右門脈と肝静脈に近接した腫瘍を認め,L3分画とPIVKA-IIの上昇もあった.腹部血管造影にて肝細胞癌と診断して,肝動脈化学療法を先行させラジオ波焼灼療法と経皮的エタノール注入療法を施行した.4カ月後より急速進展して右門脈前枝に腫瘍栓を認め,徐々に拡がり,9カ月後に永眠された.症例2はC型+アルコール性肝硬変の67歳男性.肝S6に径30 mmのCT画像上腫瘍の境界が不鮮明な右門脈後下区域枝に近接した肝細胞癌を認め,AFP・L3分画・PIVKA-IIのいずれも上昇していた.肝動脈化学療法を先行させラジオ波焼灼療法を施行した.4カ月後より急速進展して右門脈前後枝に腫瘍栓を認め,7カ月後に食道静脈瘤破裂をきっかけに肝不全が進行し,9カ月後に永眠された.肝細胞癌に対する治療は,腫瘍マーカーの経緯や各種画像診断により腫瘍の性状や局在を詳細に把握し,組織学的分化度や肉眼型・脈管浸潤の可能性など腫瘍の悪性度を推測して内科的治療か外科的治療かの治療方針を決定する必要がある.

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© 2011 一般社団法人 日本肝臓学会
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