肝臓
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症例報告
急速増大後,自然退縮した肝細胞癌の一例
大部 誠道石井 清文大木 庸子藤谷 誠米本 卓弥高橋 知也春名 智弘飯野 陽太郎熊谷 恵里奈熊谷 純一郎三根 毅士吉田 有駒 嘉宏藤森 基次畦元 亮作
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2022 年 63 巻 2 号 p. 51-61

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抄録

症例は83歳男性.11年前より肝細胞癌の治療を繰り返し行ってきた.1年3カ月前に30 mmだった多血性肝細胞癌は,その3カ月後,肝臓S2表面から大きく突出し68 mm大に急速増大していた.認知症を理由に本人・家族は治療を希望せず経過観察の方針となった.今回1年ぶりに経過観察の希望にて受診した.AFPは1年前の2772 ng/mlから2.05 ng/mlに著減,PIVKA-IIも1年前の23023 mAU/mlから55.11 mAU/mlへ減少していた.造影CTを撮影したところ肝細胞癌は10 mmに著しく縮小し乏血性の低吸収域として認められた.自然退縮する肝細胞癌の報告はこれまでも散見される.本症例は腫瘍が肝臓表面に位置していたこと,急速な増大をしていたこと,被膜形成がありさらに門脈腫瘍栓も存在していたことなどの条件が重なったことで自然退縮したものと考えられた.

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© 2022 一般社団法人 日本肝臓学会
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