症例は73歳,女性.非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変で当院通院中であった.X年5月に腹部膨満のため受診し,腹水増加を認めた.腹水中のトリグリセリドが高値で乳び腹水と診断した.外傷や手術の既往等はなく,肝硬変による乳び腹水と診断し,同年7月から絶食とし中心静脈栄養や脂肪制限食,オクトレオチドの持続皮下注療法を行ったが,腹水の減少はなく,頻回に腹腔穿刺による排液を行った.リンパ管損傷の可能性も考慮し,11月に鼠径リンパ節からのリンパ管造影を行ったが,明らかな造影剤の漏出は確認できず,その後も腹水貯留は継続した.X+1年2月からプロプラノロールを開始したところ腹水は著明に減少した.肝硬変では頻度は少ないが乳び腹水を発症することがあり,発生機序として門脈圧亢進が考えられている.肝硬変による乳び腹水に対してプロプラノロールは有効な治療法であると考えられた.