肝臓
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症例報告
多発巨大肝囊胞の形態をとった血管肉腫の1例
舩岡 昭宏沼倉 里枝寺谷 卓馬斉藤 光次佐野 圭二
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2024 年 65 巻 3 号 p. 121-130

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抄録

症例は60代女性.労作時呼吸苦,右季肋部痛を主訴に受診され,CTで多発巨大肝囊胞による胸腔の圧排が指摘されたため当科紹介となった.最大径14 cmの肝囊胞を10個肝臓内に認め,同時に脾腫瘤も指摘された.3年前には肝囊胞は指摘できず,悪性腫瘍の可能性を考えEUS,CT,MRI,PET-CT,上下部内視鏡検査,造影エコー検査を施行し,囊胞穿刺で囊胞内の液体を細胞診に提出したがいずれの検査でも悪性所見は認められなかった.臨床経過から悪性腫瘍と判断し,他院にて拡大肝右葉切除術を施行.囊胞壁は線維性被膜様組織からなり,内部で異型細胞が血管様の腔を形成しながら増殖していた.核異型が目立ち,CD31(+),CD34(+)であることから病理学的に血管肉腫と診断した.単純性肝囊胞の画像所見を呈する血管肉腫の報告はなく,特異な臨床経過を辿ったため報告する.

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© 2024 一般社団法人 日本肝臓学会
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